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雲が描いた月明かり フォトエッセイより「名場面が誕生した撮影セット場」 [雲が描いた月明かり]

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2016年に放送された韓国KBSドラマ「雲が描いた月明かり」のフォトエッセイの中に、撮影セットについての美術監督の話が書かれていましたので日本語訳してみました。そこで語られた内容を確認するため久しぶりにこのドラマをちょっと振り返ってみました^^
  
名場面が誕生した撮影セット場

キム・ソヨン美術監督

木を染色するように、素材本来の感じを生かして色付けした。
丹青と五方色をそのまま使用するよりは空間ごとに固有の色とトーンを被せて、
作家が創造した世界に現実の重みを載せた。
人物たちのエピソードと感性が溶け込んだ空間。
「雲が描いた月明かり」のセット物語


<東宮殿>

全長52メートル。大きな一つの空間に寝殿、執務室、書庫、便殿などいくつもの建物を溶け込ませました。ここに寝具を広げれば寝殿が、あそこに机を置けば執務室が、ここからあそこまで十数個の本棚を並べると書庫になり、建物全体の門を開けると便殿になる魔法のセットです。従来の時代劇の狭苦しくて小さい宮殿が常に心に引っかかっていました。それでセットを大きく建て、その時代のスケールを見せようとしました。一つの空間ですが、視聴者には複数の建物のように見えるようにしました。

現実に腰を据えた公的空間、建物の規模はこの場所で行き交う権力の象徴でもあります。イ・ヨンが仕事をし、勉強して、眠りにもつきますが、心が落ち着く場所ではありません。ぴかぴかと光沢のある建物、床に灯りが映る程に華やかですがどこか冷たく鋭いのです。

窓や門を大きく作り、全体の空間を全て見せなくてもすっきりした空間が感じられるようにしました。長さ50メートルの廊下は25メートルずつに切断し、一つは階段へ降りる構造へ、もう一つはまっすぐ伸びる構造に作り奥行を出しました。床から寝殿の最も高いところまで実に3メートルにもなります。非現実的な内容、軽い感情ラインが流れるときも空間の重みを通して現実感を与えるようにしたのです。


<内班院>

主流でなく非主流の空間、建てる方式は同じですが、それほど気を遣っているように見えない空間でした。赤いトーンである東宮殿と違い、青いトーンを与え、光も少し控えめにしました。同じ灯りをつけてもあまり照らさず、少々見劣りするように。

実はこの内班院の中で解決すべきことがとても多かったのです。そのため一階の構造を平らにしないで両側と前方は少し高く、中央は少し低く作りました。寝る場所、食事をする所、教育をする場所、仲間内で噂話をする場所...空間ごとに高低差をかなりつけました。片側で撮った時、真ん中で撮った時、あるいは階全体を利用した時、少しずつ違う雰囲気を与えるようにデザインしました。小さなセットをいくつも羅列しないで、中門と前門を閉じれば別の空間になるよう、大きなセット一つの中に集めて様々に活用できるようにしました。小さく狭いように見せたくなかったのです。


<資泫堂>

捨てられた建物、ここはイ・ヨンの母が布を染色し、染色した布に刺繍を刺していた空間です。よく見ると糸車や布を染色する道具なのがそのまま残っています。ある時は部屋だった中のがらんとした空間は外れた扉などもそっくり残したまま使用されています。宮殿の中の建物は持続的にリモデリングし、掃除をしていましたが、ここだけは変わらないイ・ヨンの内面の空間として使用したのです。それでビョンヨンがここにいるのであり、後にラオンが来るのであり...子供たちのアジトのように自由が宿った個人的な空間です。この感性的な空間は温室とつながっています。資泫堂の庭に出るとすぐに温室へ続くのです。


<温室>

壁のないセット、メビウスの輪のように循環する空間。最も切ない瞬間の愛の気持ちが極大化される場所です。真ん中に道を作り、壁の代わりに木を植えました。造園を三重にして光は入ってくるが外は見えず、人たちが出入りするけれど、その中でぐるぐる回るように構成しました。人々がここで感じる感情が外に漏れず、この中でぐるぐるまわることを表したのです。人々は秘密が多く、隠されていて、隠してこそ愛することができる人たちで、その感情を表に出せない状況に置かれているから。

直線形態でないので自分が入口に、相手がセットの向こうに立っていると、空間的には分離されていてお互い姿は見えるがすぐに走り寄れない構造です。近寄れないけれど視覚的にはすっかり見通せる残念な空間なのです。中に入ってくる人たちすべてが視線を交わすことができますが、物理的には塞がれている、そんな感情を空間化して表現しようとしたのです。

けれどもそんな感情が必ずしも閉ざされてばかりなのではありません。むしろ必ず出るべきで、出るのが正しいのであり、出る余地はあるはずで...すべての希望が閉ざされていると人は生きられないですから。壁で完全に遮断し塞がれていなかった理由がそこなのです。光が入ってくるということは息ができるという意味ではないでしょう。光がはいってくるということは風も入ってくるという、そんな意味です。


(日本語訳:花かんざし)

「雲が描いた月明かり」フォトエッセイp.232~239より

 
 
◇東宮殿(イヨンの居所)
 
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上 書庫:雲が描いた月明かり3話より
下 便殿:雲が描いた月明かり9話より

こうしてみると書庫と便殿が同じ場所だということがわかります

13話20170304_234516-vert.jpg
上 寝殿:雲が描いた月明かり13話より
下 執務室:雲が描いた月明かり17話より

寝殿も執務室も上の画像と部屋の幅や床の感じが同じですね

ところで建物の外観は水原市にある華城行宮の正堂「奉寿堂」です
2話20170303_201225-vert.jpg
上:雲が描いた月明かり2話より
下:花かんざしが2009年に撮影した「奉寿堂」


華城行宮は番組放送前の宣伝動画「ボムバスティックダンス」の撮影地でもあります

「奉寿堂」が確認できます


5話書庫20170303_202208-vert.jpg
書庫の外観:雲が描いた月明かり5話より
実際の建物は昌徳宮の後苑にある「芙蓉亭」

この建物は画面をよくよく見ると「承華楼」と書いてあります。
昌徳宮の「誠正閣」と「楽善斎」の間にはかつて「重熙堂」があり、この一帯が「東宮」と呼ばれたそうです。現在は一部の建物が残っているだけですが、その中に書庫として使われていた「承華楼」があります。なかなか考証がしっかりしていますね。


◇資泫堂(ラオンとビョンヨンの居所)

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資泫堂:雲が描いた月明かり8話、13話より

天井から布が垂れ下がっていたり、反物や乳鉢があったり、糸車があったり...
不思議な空間でしたが、イヨンの母親が布を染めていた場所という説明に納得しました


ところで資泫堂の外観は全州市にある全州郷校の「明倫堂」です



◇内班院 ラオンたち内官の詰所

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内班院:雲が描いた月明かり2話、13話より

周囲との段差が大きくてちょっと珍しい造りの空間


◇温室

7話温室20170303_203110-vert.jpg
雲が描いた月明かり7話、10話より

現代風庭園なのでどこかの植物園での撮影かと思っていましたが、これもセットだったのですね~


「雲が描いた月明かり」の撮影地は他にもいろいろありますし、主人公イ・ヨンは実在した孝明世子をモデルにしていますので、昌徳宮にゆかりの場所がたくさんあります。韓国へ行ったらロケ地やゆかりの地をたどるのも楽しそうですね~


雲が描いた月明かり KBS公式サイト(韓国語)

雲が描いた月明り KNTVで放送中↓


旧ブログの「雲が描いた月明かり」関連記事はこちらから↓


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コメント 4

コメントの受付は締め切りました
ありす

花かんざしさん はじめまして。

今年の6月に「雲が描いた月明かり」を知り、子役だった
キム・ユジョンさんが、大人の役に挑戦していると知り、それは見なくては!と思い視聴いたしました。

そしたらば・・・パク・ボゴムさんの魅力に激ハマリいたしましたー!!
恥ずかしながら、その存在を知らなかったのです・・・。
韓服を美しく着こなす姿勢に目を奪われ、
豊かな表現力に翻弄され、ココロ鷲掴みされてしまいました!

ブログをいろいろ検索していて
花かんざしさんの旧ブログにたどり着き、嬉々として拝見いたしました。その洞察力と感想に、感心したり共感したり。
OSTの訳詞においては感激で。もう素晴らしいです!本当に。

私のスタートが遅かったので、韓国版OSTやフォトエッセイも高騰していて(涙)なんとかフォトエッセイは手元に届きました!
韓国語はドラマ視聴のおかげで少しのヒアリングはできるものの
まったく読めず。何度か覚えようと試みてはいるのですが、頭に文字として入ってこないのですよ。。
なので、気になって仕方ないところを訳してくださっていて嬉しいです。ヨンの執務室ですか、机のある部屋の格子が美しいなぁといつも思ってました。書庫も。どこでロケしたのかな、実際に見たいなと思っていたのですが、セットなのですね。
そういったことが分かるのも、花かんざしさんのおかげです。
本当にありがとうございます!
雲が描いた月明かりのロケ地めぐり、是非行ってみたいです。

初コメで長々と失礼いたしました(汗)
これからも、楽しみに拝見させていただきます。
どうぞよろしくお願い申し上げますm(_ _)m


by ありす (2017-09-02 18:05) 

花かんざし

ありすさん、はじめまして!
ブログへのご訪問とコメントありがとうございます。

「雲が描いた月明かり」のことを話題にしているブログは本当に多数あると思いますが、その中から私のブログを見つけてくださり嬉しいです~^^

ちょうど一年前の今頃、このドラマに夢中になっていました~
ユジョンさんのラオンがとてもかわいらしかったですしね^^
パク・ボゴムさんの王世子姿は本当に素敵で、
原作とはまた違う見どころ満載のドラマに魅了され
ついつい旧ブログでも記事をたくさん書いていました~

ドラマ後半はフュージョン時代劇の中の架空の出来事が、歴史的事実とも原作ともどんどん離れて行ってしまう部分に戸惑ってばかりでしたが….
全州や昌徳宮のロケ地巡りの最中に思い出していたのは、ドラマ前半の明るくコミカルな雰囲気のヨンとラオンでした。

ボゴムさんの新しい作品の情報が待ち遠しいこの頃です。
ドラマになるのか映画になるのか?
でもきっと次の作品が決まったら気になっていろいろブログ記事を書いてしまいそうです^^

きまぐれマイペース更新ですがこちらこそどうぞよろしくお願いいたします♪

by 花かんざし (2017-09-03 15:11) 

HIRO

初めまして。

旧ブログを見せていただきました。
たまたま、ちょっと、내사람を検索していたら、花かんざしさんのブログにたどりつきました。

このドラマはもともとユジョンちゃんと、ジニョンくんが出ていると思って、KNTVで始まった時にみはじめました。

そしたらなんと このヨンセジャにはまってしまいました。

終わった頃にはボゴムくんの演技にはまり、その後応答せよなどをみはじめた感じてす。
すっかり、魅力にはまりました。
日本のファンミや、韓国のファンミにも参加して生ボゴムくんをみれて幸せでした。

ブログを読んでいてそいそうと思うところがたくさんありました。

OSTの解説もありがたいです。
내사람がどこでかかったのか解説してくださってるので、すぐにわかりました。
何話かを探していたので。

ほんとにありがとうございました。
by HIRO (2018-05-10 23:54) 

花かんざし

HIROさん、初めまして!
ブログへのご訪問とコメントありがとうございます^ ^
このドラマがきっかけでボゴムさんのファンになられたのですね!
日本のファンミは私も参加しましたよ^ ^
HIROさんは韓国のファンミにも参加されたのですね!素晴らしいです〜^ ^
ボゴムさんや雲月のことを扱ったブログは本当に沢山あると思いますが、
その中から私の記事を見つけて下さり、嬉しいお言葉までありがとうございました!
最近個人的にちょっと忙しくしていて中々更新出来ずにいますが、また時々覗いてみてくださいね!
by 花かんざし (2018-05-11 17:22) 

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